名旅館の条件とは?

「古き良きもの、心豊かなもの、今日失われつつある美しい日本を大切にする〈あさば〉。修善寺桂川の上流、豊かな山の緑を背にして600坪の池に浮かぶ能舞台はまさに幽玄の世界。自然の呼吸を肌で感じながらテラスで傾けるシャンパングラス。能舞台が影をおとす水面には、木々のざわめきが風紋を連れ、花々や枯葉たちをそっと届けます。」(パンフレットより)

いやあ、すばらしかった。あさば。
CREA』をはじめとする雑誌の旅館特集では必ず上位に君臨する宿。もう何年前からだろう、ずっと行きたいと思っていた憧れの場所。
感想を先に書いてしまうことにします。
ここまで期待以上の満足感を与えてくれた宿は、あさばが初めて。どの雑誌でも、誰に聞いても絶賛されるこの宿だから、私の期待は相当なものだったはず。その私の期待をいとも簡単に、あっさりと上回ってくれました。空間、食事、ホスピタリティ...、あの門をくぐってから出るまで全てにおいて満足。
憧れの宿という存在から、すっかり大ファンというかむしろトリコになって帰ってきた。他にも行ってみたいお宿はたくさんあるけど、ここは絶対に絶対にまた訪れたい。常宿にしたい。

何が素敵って、まずお部屋。電話予約の際に相談して、全18室の中からすすめられた「藤」。部屋に入ってハッとする。

庭を一望する大きな窓は、額縁におさめられた一枚の風景画のよう。シンプルにして完璧なバランスと清潔感がとても心地よい空間。引き算の美学とはこういうことなんだね。

そして私が館内で一番気に入ったのは「サロン」と呼ばれるスペース。

ドアの前には電飾のオブジェ、サロン内には"ハリー・ベルトイア"のワイアーチェア。(この椅子が意外なほど座りやすい。欲しくなった!)

「サロン」から能舞台を望む。

純日本建築にモダンアートが見事すぎるほどに融合。最近流行のデザイン旅館てやつ?いやいやそんな陳腐なものじゃありません!安易にやりすぎると安っぽくダサくなりがちだけれど、そこはさすがあさば。それだけでも十分素敵で風格漂う日本家屋を、より一層かっこよく引き立てる現代テイストの取り入れ方。そのギリギリのバランスが素晴らしすぎる。
非常口の誘導灯にもさりげない工夫が。

確かにあの蛍光緑の直接的な光はこの宿には強すぎる。こんなところにも空間へのこだわりと心くばりが感じられます。

夕方からは能舞台がライトアップされ幻想的な雰囲気に。お風呂あがりにサロンで休んでいると、支配人からシャンパンのサービス。

お部屋で頂く、夕/朝食も完璧。
食事の一品一品まで語り始めると有り得ない長編日記になってしまうので、詳細は写真を見ていただくとして...
http://f.hatena.ne.jp/extrawhipcoco/200705_asaba/

あたたかいものをあたたかく、冷たいものを冷たいままに、そして旬のものを美味しく味わって欲しいというおもてなしの気持ちが伝わってくるすばらしい料理の数々。この2食だけで、自分史上No.1の食材にいくつか出会いました。ご飯の炊き加減も文句なし!(早く食べたくて焦ったらしく写真を撮り忘れている。笑) 2杯もお替りして満腹で倒れそうだったけど、それでも「こんなに美味しく炊けたご飯を残すなんてもったいない!」と思うほど。

ちなみに寝具も最高です。
マットレスか?と思うほどぶ厚い敷き布団、快適な重みのある掛け布団。枕も全てふっかふか。ウェスティンホテルのヘブンリーベッドを軽〜く超えます。試行錯誤を繰り返した特注品だそう。

これでもかとばかりに褒めちぎってますが(笑)、最後にもうひとつ。
館内に静寂が保たれているのもいい。子供もいないし(7歳以下は宿泊不可)、聞こえるのは滝から池に流れ落ちる水の音。鳥の声。心地よすぎます。
昼間から入りたいときにお風呂に入り、食事もふとんを敷くのも全て宿にお任せ。なんて贅沢なんだろうと思う瞬間。こうやって安心して身をゆだねられるのが、名旅館の条件なのかな。
350年の歴史と評判に甘んじることなく、常に進化する宿、あさば。評判通り、いや評判以上でした。1泊2食付1人¥38,000〜。この感動を味わえるのだったら安すぎるくらい。
お庭にはもみじの木が多く、紅葉の時期はより一層素敵だと思われます。年に数回行われる能公演の日にもいつか必ず...と決意。(ただし、受付開始から数分で予約が埋まってしまうそう...苦笑)
最近ホテルばかり追いかけてきた私だけど、これを機に日本旅館の魅力にハマってしまいそう。至福の時間でした。