10年経って、やっと。

急激に上海旅行熱が高まっています。
これは先日部屋の整理をしたときに発掘した中国・人民元の紙幣。約10年前の2000年の春、大学生の長い春休みに1ヶ月ほど旅行したときのもの。

当時は観光目的の短期滞在であっても必ずビザが必要だったり(2003年9月1日より滞在日数が15日以内に限りビザ免除)、人民元には海外への持出し制限がある関係上、日本国内で両替できなかったり(円→元、元→円どちらも)と、旅の準備だけでも今よりずっとハードルが高い国でした。
当然、両替した分は使いきって帰国しようとは思っていたものの、旅の後半は精神的にかなり疲れ果てていたので、もうたいした額じゃないし、とそのまま使いきらず両替もせずに持ち帰ってきてしまったもの。そのまま引き出しの奥底に入れっぱなしにしていたのを先日発見し、行く予定もないし、このままだと紙幣が劣化してボロボロになりそう(すでに汚いんだけど)だから、処分したいなーと。
で、早速ネットで調べたら、なんだ、いつのまにか両替ができるようになっているじゃないですか。というわけで早速みずほ銀行の外貨両替ショップへ。ざっくりレートを確認して、まあ1万円もいかない金額だナーなどと皮算用していたら、窓口のおねえさんが一言。

「こちらは旧紙幣になるので、おそらく日本国内では両替は不可能かと...」

聞けば、私が部屋で死蔵させていたこの10年の間に、全紙幣が全て毛沢東肖像画入りのものに切り替わったとのこと。*1うわー知らなかった。経済ニュースに疎いとこういう目に遭うんですね、わかります。
再度ネットで一応調べてみたけど、やはり中国国内でないと両替はできないよう。このままゴミになってしまうのもやはり気持ち悪いので、うーん、誰か近々中国行かないかなあ、などと考えていた矢先。テレビでたまたま焼き小籠包の映像を目にしてあーーあの屋台に行きたい!とヨダレをたらしそうになったり、あのテレビ棟の前にどーんとそびえ立つ世界一の高層ホテル(2009年12月現在)パークハイアット上海の写真を見てうっとりしている自分に気づく。あれ、あれれ?もしかして私、上海に行きたいの?行きたくなってるんじゃないの?と。

別に行きたいなら勝手に行けばいいじゃんって話なんですが、こんな書き方をするのは、10年前訪れた中国旅行に強烈な思い出があって、もう二度と行かないだろうなと思っていた場所だったから。思い出というか...むしろトラウマに近い(笑)。
あのとき二十歳だった私は、中国という国に対してあまりにも無知だった。海外旅行をいくつか経験し少しは旅慣れていたつもりでいても、あれほどに自宅を離れるのは初めてだったし、ただでさえ個人旅行のしにくい国でストレスがたまることに加え、現地発着ツアーで旅程の半分ほどを一緒に過ごした欧米圏からの参加者の行動に対するカルチャーショック、さらには1ヶ月べったり一緒だった同行の友人とも気を使い合ったり、と精神的にも限界にきていて。メンタル面でのタフさには結構自信があるけれど、このときは帰国後軽いうつになったくらい(笑)。そんなこんなで、自分とあの国は相性が悪い、もう二度と行かない!びた一文落とすもんか、などと吐き捨てるように帰国したのでした(笑)。 
今考えるとあのときの私は、そもそも異質なものを理解しようと努力する意思も、自分の想像を超える状況をプラスに捉えて楽しむ技術も持ち合わせていなかった。あれから10年。器が大きくなった...かどうかは全く自信がないけれど、帰国後自分なりに積み重ねてきた知識や、10年で少しだけ得られた柔軟性が、たぶん、もう少しあの国への理解を助けてくれるような気がする。


そんなふうにやっと思えるようになったところで目にした最新号の『旅』。上海特集です。

旅 2010年 01月号 [雑誌]

旅 2010年 01月号 [雑誌]

私が訪れた10年前も、街はどこもかしこも建設ラッシュ。それは街を歩いていてもひしひしと感じることではあったけれど、テレビ棟に上って展望台からその景色を見たときの衝撃は今でも忘れられない。
古いものが容赦なくぶち壊され、躊躇することなく、都市が、国家が作り上げられていくその様。まさにこの国は大きな渦のまっただ中にいる。今思えばそれも序章にすぎなかったけれど、その瞬間を自分の目で目撃したことすら少し怖くなってしまうほどの、まさに"激流中国"を象徴するような景色だった。あのときも戦慄を覚えながら未来の中国の光景を想像したものだけど、今、はるかにそれを凌駕するものがあの大地には広がっているんでしょう。もしかしたら、あの頃の面影をみることの方が難しいかもしれない。


2ー3月に訪れたときもかなり寒かった記憶があるので、どうせもう一度行くならもう少し暖かくなってから!…とはいえ、来年5月の万博を控え、更なるスピードで変化を続けているて場所だけに、そううかうかもしていられないのだけれど。
とにかく、まずは10年前の旅行を総括してきちんと向かい合うことから。この作業をしなければ、次の訪問もきちんと楽しめない気がする。というとどんだけトラウマになっているのか(苦笑)という感じですが、もはやネタ!というような貴重な体験も結構できたし、やっぱり行ってよかったと思える大切な大切な思い出。だから忘れないためにもちゃんと記録に残しておこう。

というわけで、とりあえず写真だけ先にアップしてみたけど、少しずつ当時の日記も回顧エントリとしてあげていくかもしれません。
http://f.hatena.ne.jp/extrawhipcoco/2000/