『硫黄島からの手紙』

オープニングとエンディングで映し出される静かな硫黄島。終始、淡々と冷静な視点で描かれている。地下壕での約1ヶ月間の戦いはもっともっと壮絶なものだったろうし、細かい描写にけちをつければきりがないけど、まずはこの題材を選んで映画にしたC.イーストウッド監督に拍手を送りたい。そして、二宮和也の演技と音楽にも。
わずか61年前。この島で、想像を絶する悲惨な戦いがあった。日本兵21000人のうち、生き残ったのはわずか1000人。いまやそのうちの生存者は約20人ほどだという。火山の地熱とガスのため遺骨収集が困難で、1万人を超える遺骨が今もあの島に眠っている。
この島は硫黄ガスが島中に蔓延する火山島である。川が1本もないため、飲み水は貯水槽を設けて雨水を貯める方法しかなく、その水さえ汚染されており、兵士たちはパラチフスや下痢、栄養失調で次々に倒れた。地下壕での灼熱地獄、食料・水不足、毎夜訪れる空襲・砲撃。そこら中に転がる死体。まさに極限状態だっただろう。
圧倒的な戦力の差がわかっていながら挑んだ。それは、この島が日本の生命線だから。

「我々の子供らが日本で一日でも長く安泰に暮らせるなら、我々がこの島を守る一日には意味があるんです」


あの凄惨な戦いなどまるでなかったかのように、のほほんと平和をむさぼっている今の日本は、彼らの命の代償に値する国といえるだろうか。彼らが今の日本を見たらどう思うだろうか。
私たちは自国の歴史をあまりにも知らなすぎる。