『父親たちの星条旗』

戦争という「一大イベント」では常に美談や英雄を作り上げ、プロパガンダとして利用するアメリカ。それは単なる道具であって、使い捨てに過ぎない。例え国家レベルにおいて戦争が終結したとしても、兵士一人一人の中での葛藤は続き、解放されることはないというのに。この映画からは、歴史から学ぶという謙虚な姿勢がまったくない、アメリカという国の欺瞞、戦争政策に対する冷静で痛烈な批判が感じられた。
特に印象的なのはスタジアムでの場面。“あのシーン”を再現するべく、摺鉢山の頂上に見立てた張りぼての山に星条旗を立てるという茶番。花火が打ち上がる中、それに熱狂する国民達。明らかに異常だと思った。
エンドロールに流れる、実際の海兵隊員の記録写真の数々。観客の誰ひとりとして、館内が明るくなるまで席を立つことはなかった。